[book]『リラとわたし ナポリの物語1』

 

リラとわたし (ナポリの物語(1))

リラとわたし (ナポリの物語(1))

 

ある人がこの本を夢中になって読んだ、とブログに書いていて手に取った。

こういう小説が出ていたことは知っていたけれど、装丁の雰囲気からすっかりYA小説だと思い込み、自分は対象年齢から外れているものだと思っていた。ところが、その人のブログの紹介とあわせて、エリザベス・ストラウト推薦の文字を見て、あ、そういう本なんだ、となる。

冒頭、少女時代の回想がやや長くて、おもしろいけれどよくある感じかな…と思いきや、思春期の回想に差し掛かる前後くらいから俄然エンジンがかかってくる。

その日暮らしの貧しさ、暴力沙汰の絶えなさ、積年の恨みごと…といった土着的なものがさまざまに充満しているナポリのとある地区、そこに生まれ育つ「私」と親友リラという才気煥発な二人の少女。

この場所では女子どもに自由はない。例えば、妹がよその男から色目を使われると兄が殴りつけて屈辱を晴らそうとする、ということが頻繁に行われている。つまり女子どもの権利は法律により守られるものではなく、家族の男たちに(半ば所有物として)保護されたり、結婚で譲渡されたりする存在とされている。

「私」とリラは勉学の才や想像力、胆力、魅力など、持てるものを駆使して、この場所からどう抜け出すか、あるいは世界を再構築してどう自由になるか、ということを半ば無意識的に模索し続ける。

二人の関係は愛情や反発、競争や憧れ、失望といったものにたえず形を変え続ける。そういう関係を「百合」と表現する人もいるかもしれないけれども、どこか相手を出し抜きたがるような、甘さを突き放すような荒々しさがある。二人が成長するにつれ、近づいたり離れたりを繰り返しながら関係がより複雑になっていき、目が離せなくなる。

後半を一気読みして、さあここからどうなる、というところで一巻が終わって、なんと上手い…と思った。